「うちの子はADHD(注意欠如・多動性障害)かもしれない」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、最近の研究では、私たちが「ADHD」と呼んでいるものが、本当に脳の障害なのか、それとも社会が作り出した概念なのかという議論が活発になっています。
ADHDとは何か?その見方が変わりつつある
ADHDは一般的に「注意力が続かない」「じっとしていられない」「衝動的に行動する」などの特徴を持つ状態とされています。しかし、最近の研究では、ADHDは「個人の中に自然に存在する均一な状態ではなく、社会的・環境的要因と切り離せないもの」と述べられています。
つまり、ADHDは脳の「病気」というよりも、社会が作り出した「概念」かもしれないというのです。
国によって大きく異なる診断率
ADHDが社会的な概念である証拠として、国による診断率の違いがあります。アメリカで使われる診断基準は、世界保健機関が推奨する基準と比べて、3〜4倍もADHDと診断される率が高いのです。
また、研究によると、ノルウェーやスウェーデンの親は、アメリカやオーストラリアの親と比べて、子どものADHD症状を報告する際により正確である傾向があります。これは文化によって「普通の子どもの行動」の捉え方が異なることを示しています。
学校環境とADHD診断の関係
特に子どもの場合、厳格な学校環境での評価がADHD診断に大きく影響します。厳しい規則や高い成績を求める環境では、集中力や自己調整能力の個人差が目立ちやすくなります。
例えば、オーストラリアでは特に私立学校の高校後期の生徒でADHD診断が増加しているという報告があります。これは教育環境の厳しさと診断率の関係を示唆しています。
「ADHDは存在しない」という主張
アメリカの神経学者リチャード・ソール博士は「ADHD Does Not Exist(ADHDは存在しない)」という本の中で、ADHDと診断される人々の中で、実際にADHDを持つ人は一人もいないと主張しました。
これは単に「過剰診断されている」という主張ではなく、「ADHD」という障害そのものが存在しないという根本的な問いかけです。
鍼灸・マッサージが与える効果
ADHDと言われている症状に対する治療法として、鍼灸やマッサージが注目されています。研究によれば、鍼灸はADHDと言われている症状の改善に一定の効果があるとされています。特に、多動性スコアや注意力の向上において、薬物療法と比較しても有効性が示されています。
鍼灸は、脳内の神経伝達物質のバランスを整え、ストレスを軽減する効果があります。これにより、症状が緩和される可能性があります。また、マッサージも同様に、リラックス効果を通じて集中力や注意力の向上に寄与することがあります。
新しい見方:「障害」ではなく「違い」として
ADHDの特徴とされる行動は、必ずしも「障害」ではなく、人間の行動の自然な多様性の一部かもしれません。最近では「神経多様性」という考え方が広まり、ADHDを「治すべき障害」ではなく「脳の働き方の違い」として理解する視点が注目されています。
私たちにできること
ADHDを社会的な概念として理解することは、診断された人へのレッテル貼りを減らし、多様な行動パターンを受け入れる社会づくりにつながります。
大切なのは、「ADHD」というラベルにとらわれすぎず、一人ひとりの特性や環境に合わせたサポートを考えることではないでしょうか。
ADHDの診断を受けるかどうかに関わらず、その人の強みを活かし、困難を感じる部分をサポートする環境づくりが、真に必要なことなのかもしれません。